・ 說文解字 (せつもんかいじ)

・ 部首分類式の中国最古の字書

後漢の許愼が著した中国最古の字書。漢字の造字法を六書(りくしょ)に分類し、540の部首を設け、9353字を篆書で出し解説を加える。甲骨文字の存在は知られていなかったので、その字解には誤りが多いが、文字学の聖典として権威をもってきた。テキストとしては宋の徐鉉『説文解字』(大徐本)、徐鍇『説文解字繋傳』(小徐本)がある。注には清の段玉裁『説文解字注』があり、一般的に優れているとされる。上海古籍出版社の影印本がよい。また、桂馥『説文解字義證』、朱駿聲『説文解字通訓定聲』(中華書局・藝文印書館から影印あり)もそれぞれに長所があり利用できる。これらは勿論、稀覯の注釈書まで網羅した丁福保『説文詁林』(中華書局)は便利である。馬敍倫『説文解字研究法』(中國書店)等参照のこと。漢字そのものの研究、甲骨文・金文を使用する中国古代の研究には、当然白川靜先生の『説文新義』『説文新義 通論篇』(五典書院)を参照すべきであることは言うまでもない。

・ 齋主付記

Additional Notes

白川静『説文新義』については、近年 平凡社より白川静著作集の別巻として刊行された。

段玉裁の『説文解字注』を補う資料として知っておきたいのが馮桂芬の『説文解字段注攷正』(中文出版社、手稿本影印)である。この書は段注の誤りを校正し、且つ段注に引かれている典拠の出典を逐一調べた労作である。残念ながら馮氏の生前に刊行されることはなかったが、現在、馮氏自筆の手稿本が中文出版社から影印刊行されている。更に本書の誤りを正して欠を補った邦人の成果として、倉石武四郎「説文解字段注攷正訂補」、小学研究班「續説文解字段注攷正訂補」(一)(二)がそれぞれ『東方學報(京都)』の第2・53・54冊(31,81,82年)に収録されていて参考になる。

また、段注に採用されなかった「新附字」(徐鉉が『説文』未収の親字を新たに加えたもの)を見る時に、或いは大徐本を利用することもあるかも知れないが、この大徐本最善のテキストである本邦静嘉堂所蔵宋小字本(四部叢刊初編に影印されているもの)を陳昌治氏が見やすい形に仕立て直した「一篆一行本」が中華書局から影印刊行されている。安価で手軽に入手でき、『説文』の本文のみを見たい時には何かと便利である。 猶、『説文』全般についての踏み込んだ概説書に頼惟勤監修『説文入門』(大修館書店)、阿辻哲次『漢字学―説文解字の世界』(東海大学出版会)があり、『説文』を学ぶにあたっては是非一読しておきたい。

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中華文化網Big5未詳巻十五上の許愼の序文のみ。